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- 家賃侍が不動産業界を斬る!第21回 東日本大震災後の不動産市況を斬る!
第21回東日本大震災後の不動産市況を斬る!
2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますと共に、亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。そして、被災地の一日も早い復興、並びに今なお不自由な生活を強いられている方々が一日も早く日常生活を取り戻されることを願っております。
東北から関東の広い範囲で発生した巨大地震と大津波は、各地に甚大な被害をもたらしました。被災地のみならず日本中、いや世界中の人々にとって忘れることのできなくなった
「3.11」。
この日を契機に世界が一変したと言っても過言ではないでしょう。
震災がもたらした影響はどうだったのでしょうか?
まず震災前はどうだったか?ですが、リーマンショック後の大幅な下落から徐々に下げ止まり、不安要素はあるものの市況は回復傾向にあったと言えます。
ところが今回の震災で、状況は一変しました。
震災直後、不動産取引に限らず経済全体が大きく落ち込み、企業活動に打撃を与えました。被災地では特に沿岸部でほとんど手が付けられず復興の糸口さえ見いだせない地域も多いのが現状です。
各企業の意識として、震災の影響があると考えている企業が80%以上、また需要が減少すると考えている企業が50%以上いると言われています。
被災地を除いた地域での企業倒産は4月では1,000件近くに達し、負債総額は2,600億円以上となっています。
不動産においても東日本沿岸部を中心に、被害を受けた地域の取引は停滞しています。売りたくても売れない、買いたいが慎重にならざるを得ないジレンマが現れています。内陸部など被災された企業の移転先としての需要が高まり供給不足の地域もありますが、相場としては上昇せずむしろ下落傾向です。
首都圏でも湾岸部が液状化や津波の被害を受けたため需要・供給とも低迷しました。 賃貸物件においても同様で、被災地はもちろん都心においても影響が出ています。 特に繁華街などでは外国人観光客の激減や消費自粛などにより人通りが減少し、苦しい経営を迫られている所も多く、移転や撤退を迫られている店舗も少なくありません。 また、店舗に限らずオフィスにおいても古いビルから耐震性の高い新しいビルへの移転・統合や事業所閉鎖が加速し、比較的古いビルでの空室が増加しています。
しかし今後に向けて好材料も出始めています。
被害の比較的小さかった企業を中心に復旧が進み、自動車メーカー等が操業を再開しています。また被災地支援の為に物資の増産体制がとられ、工場のフル稼働の動きも出ています。
不動産においても津波の心配がなく地盤の安定した内陸部を中心に住宅・事業所の需要が高まりつつあります。また被害を受けていない北海道内陸部などでは、外国資本による投機の動きも活発化しています。
首都圏のマンションなどは耐震性に優れた築浅の物件が好調で、4月に2,300戸程度に落ち込んだ供給戸数が5月の見込みで5,000戸以上と大きく回復に向かっています。
震災から時間が経つにつれ徐々に明るい兆しも見え始めていますが、予断を許さない事のひとつに原発の問題があります。
一見不動産とは関係なさそうですが、今問題の福島第一原発を抱える福島県では、管理区域以外でも県外に移転する住民や企業が増えています。また部品メーカー等未だに復旧の目処が立っていない企業が多いのも現実です。
政府の発表が二転三転する中で、情報の取り方に注意する必要があるかもしれません。
今後の見通しは各機関とも復興が進むとの論調が多く見られます。
しかし被災地の現状を知ればまだまだ時間がかかると言わざるを得ません。2ヶ月以上たった今でも、手付かずの地域が多くありますし、その被害の大きさ、広さは甚大です。本格的な復興の動きは年が開けてからになるのではないでしょうか?
不動産の市況も経済状況の影響を大きく受けますから、経済復興の進捗が大きな鍵となります。従来の経済動向のみならず、今後は更に視野を広げ、情報ソースも多く取る事が不動産市況を見ていく上で必要となっていくでしょう。