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第13回建設協力金を斬る!
建設協力金とは、一言でいうと建物の借主が貸主に預託するお金のことです。
つまり、ロードサイド店舗等の事業用建物の賃貸借契約で、賃借人が賃貸人に対し建物の建設費用を預けるというものです。
借主が貸主に対して建物建設費用の一部、又は全額を預託し、貸主はその預託金を建設費用に充当します。また、建設協力金は、契約期間内に全額償却するリースバック方式を採用し、月々の賃料から相殺する形で貸主から借主へ返還されるケースが一般的です。
具体的な流れ
- 土地所有者が出店希望者から「建設協力金」という名目で建設代金を無利息で借り、貸店舗を建設し、貸店舗のオーナーとなります。
- オーナーは、その貸店舗を賃借人に賃貸します。と同時に無利息で借りている建築代金は、「保証金」と名称を変えます。保証金は通常契約期間中に全額返済するように、契約期間中均等に返済します。(例:20年間240回返還など)
- オーナーは賃借人から月々賃料の支払いを受けます。保証金の返済分は通常、賃料と相殺することで返還します。
この建設協力金方式には双方にとってのメリットが有ります。
オーナー側のメリット
- テナント募集の必要性無し
- 保証金の金利不要
- 賃借人に中途解約された場合、保証金の返済義務がなくなる
- 相続税の節税対策
契約直後に相続が発生した場合には、土地は貸家建付地、建物は貸家、保証金は債務になります。
ただし、期間を経るごとに債務が減少し、賃料からの手取分が資産の増加になります。
テナント側のメリット
- 既存建物と違い、借主希望の仕様で建築が可能
- 通常10年以上の定期賃貸借契約となるため、事業の安定化が可能
- 貸主が建物のオーナーとなる為、土地賃貸借に比べて地権者の同意が得やすい
その一方で問題点が無いとも言えません。
- 賃借人の倒産・撤退時の処理が複雑
- 建物が賃借人仕様である為転用がし難い
- オーナーのキャッシュフローがマイナスになることもある
収入(保証金が差引かれる前の金額)から経費として控除されるのは、固定資産税・減価償却ぐらいです。その差額が所得となり、そこに所得税・住民税がかかります。一方、実際に入ってくる賃料は、保証金の返済部分を 差引かれた後の金額となります。
所得税・住民税の負担と保証金の返済で、思いもよらぬ状況になりかねません。
また、実際の契約では以下のようなケースも見受けられます。
- 建築費用が絡むため、計画が進んでから賃料・建設協力金の額が変更になるケース
- 周辺の相場とは明らかに乖離した賃料設定をされているケース
このようなメリット・デメリットを良く見極め、どちらか一方に偏った契約になっていないか?しっかりチェックすることが大切です。周辺の状況を調べたり、専門家に相談することも自己防衛策として有効です。
そしてなにより、貸主・借主双方が納得して契約を続行すること、しこりを残さない人間関係づくりが事業継続に欠かせない要件ではないでしょうか?