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家賃侍が不動産業界を斬る!第20回 2011年不動産市況を斬る!

家賃侍が不動産業界を斬る!

第20回2011年不動産市況を斬る!

2008年のリーマンショック以来、不動産市況は大きな波に飲まれ、多くの企業が苦しみ、姿を消していきました。 そして昨年から今年にかけて、いくらか回復の兆しが見えていますが、この先果たしてどうなるのでしょうか?予測の難しい市況を考えてみたいと思います。

賃料を推し量る上でも不動産価格の動向は勿論欠かせませんが、不動産価格を大きく左右するのが経済全体の動きです。
リーマンショック以降、不動産価格は大きく下落し現在もその状況を脱したとは言えない状況です。 不動産価格はもちろん、日本の経済全体がダメージを受けています。
総務省統計局のデータを見ると、国民総所得は2007年に比較し2009年は-8.7%、四半期ベースで見ると2007年第4四半期に比較して2010年第3四半期は実に-12.8%と落ち込んでいます。
国内総生産も同様で、2007年比2009年は-5.9%、2007年第4四半期比の2010年第3四半期は-12.9%とマイナスが続いています。
株価をみても2007年比での2010年の数字は、銘柄数で-3.3%、売買高では-6.2%となっています。そして売買代金は実に-51.7%と大きく下がり、TOPIX(東証株価指数)は-46.7%です。

もっとも、昨年後半から上昇の兆しが見えており、今年に入ると+3.3%と回復傾向が見えてきました。 不動産においても、住宅着工数が増加しています。特に分譲マンションは昨年12月では前年比+64.5%、戸建住宅は+19.4%と市場を牽引しています。 但し、建設工事全体の受注高としては前年割れの月も多く、2010年平均では+1.9%に留まっています。

一部の商業地では大型開発などが進み、賑やかさを取り戻しつつあります。それに力を貸しているのが、中国をはじめとする外国資本の流入と言えます。これを商機ととらえ、各方面では様々な囲い込みが行われています。地方空港からの中国直行便新設もそうでしょう。広大な隣国は日本の様々な商品に羨望の眼差しを送っているようで、不動産も例外ではないようです。

しかし不安要素もあります。確かに中国経済は急成長を遂げていますが、昨今では中国のバブル崩壊を危惧する声も少なくありません。人民元の行方にも注目すべきでしょう。同じく海外ではエジプト、チュニジアに端を発した民衆蜂起が中東諸国に飛び火し、世界有数の産油国であるリビアでも緊張状態が続いています。この問題は原油価格を押し上げ、各国の経済環境を一変させてしまう恐れもあります。

また、世界的な天候不順によって、食品価格にも影響が出ています。オーストラリアの大洪水、ロシアの干ばつは、小麦価格に大きな影響を与え、食糧品全般の価格高騰の危機を招いています。
これらによって仕入れ価格が高騰すれば企業体力が奪われ、価格に上乗せすれば消費者の購買意欲を削いでますます景気後退という事にもなりかねません。

不動産という大きな括りでみれば、価格が大きく下落したこの数年では賃料はどう変動しているでしょうか?
不動産価格の下落幅が大きかった2008年から2009年で、確かに賃料も下落しましたが売買価格の下落幅ほどは下がっていません。売買価格の下落が賃貸に直結することは少なく、むしろ数ヶ月から数年遅れて影響が出てきます。今年後半にはまた何か動きがあるかもしれません。

昨年は相場下落に歯止めがかかるとの予想も有りましたが、現実は厳しいようです。一部の商業地では上昇に転じているところも見受けられますが、全体で見ると下落は続いています。
オフィスの賃料はこの1年で-5%程度と下落し、空室率は東京で7%程度、地方都市では10%以上となっており、改善の兆しは見えてきません。
各ビルとも入居者獲得に苦心しています。事業所の統廃合や移転が多いのもその要因です。
今後も下落率は幾分圧縮されるものの、下落傾向はしばらく続くと思われます。

相場等の情報だけでなく、先に述べた東証株価指数(TOPIX)、経済産業省からの国内総生産や日銀短観などの情報も収集し、その動向を注視する事が大切です。
新聞紙面の隅にある小さな目立たない記事が、数カ月後に大きな火種となっているかもしれません。 日頃からアンテナを高く上げておく必要があるのではないでしょうか?

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